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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
Read 猫の蚤とり武士 (ねこののみとりぶし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 185,496 characters · 368 screens
「それで事情よく解り申した。……それに致しても刃三十郎めを、とり逃がしましたはいかにも残念!」
「ナニ、刃三十郎? ……ではその辻斬りの武士の名は?」
「刃三十郎と申しまする」
「それどうして貴殿にはご存知かな?」
少しけしきばんで藩士たちは云った。
「拙者は拙者の朋友のために、其奴を尋ねておりますもので」
「貴殿の朋友? その朋友は?」
「三十郎のために父親を討たれ、復讐を心がけおるものでござる」
「敵討ち! それはお勇ましい!」
と、紀州藩士は感心したように云った。
「三十郎逃げましたはほんの今しがたの筈。ではいまだにこの辺に、かくれおるやもはかられませぬ」
と兵庫は云って四辺を見廻し、
「拙者探しとう存じますれば、ご貴殿方におかれても、ご尽力くだされて拙者と共に……」
「それよかろう」
と一人の藩士が云った。
「よろしいよろしいご一緒に探そう」
と、つづいて、もう一人の藩士が云った。
こうして三人は露路や小路を、そこかここかと探し廻った。
菊女は一人で部屋の中で、物思いに耽っていた。
とそこへ番頭が血相を変え、
「大変でございます!」
と飛び込んで来た。
「鵜の丸様が大怪我とやらで、一人の男が玄関まで、知らせに参ってございます!」