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しろばなのあさがお
白花の朝顔
泉 鏡花
Read 白花の朝顔 (しろばなのあさがお) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 30,880 characters · 62 screens
あまりの事に、寂然とする、その人立の中を、どう替草履を引掛けたか覚えていません。夢中で、はすに木戸口へ突切りました。お絹は、それでも、帯も襟もくずさない。おくれ毛を、掛けたばかりで、櫛もきちんと挿っていましたが、背負上げの結び目が、まだなまなまと血のように片端垂って、踏みしめて裙を庇った上前の片褄が、ずるずると地を曳いている。
抱いて通ったのか、絡れて飛んだのか、まるで現で、ぐたりと肩に凭っかかったまま、そうでしょう……引息を吻と深く、木戸口で、
「ああ、お婿はん。」……
と泣くようにいった。生死の最中、洒落どころではないのですが、これは京都で、連中が、女形の客だというので(お婿はん、お婿はん。)と私を、からかったのが、つい出ました。
「……わて、もう、死ぬるか思うた。」
と、目が澄んで、熟と視て、颯と顔色が蒼ざめたんです。
「あんたはんに恥を掻かせた、済まんなあ、……生命の親え。」
「…………」
「二階を下りしなに、何や暗うなって、ふらふらと目がもうて、……まあ、私、ほんに、あの中へ落ちた事なら手足が断れる。」
という声も、小刻みで東へ廻る。茶屋の男は木戸口に待っていたが、この上極りを悪がらせまい用心で、見舞もいわない、知らん顔で……ぞろぞろついて来た表口の人だかりを、たッつけを穿いた男が二人、手を挙げて留め