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しろばなのあさがお
白花の朝顔
泉 鏡花
Read 白花の朝顔 (しろばなのあさがお) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 30,880 characters · 62 screens
二階の裏窓から漏れる電燈に、片頬を片袖ぐるみ笠を黒髪に翳して、隠すようにしたが、蓮葉に沓脱をひらりと、縁へ。
「ふらふらする。ちょっと歩行くと、ふらふらしますわ。酔っちまって。」
と、元の座にくずれた。
「ああ私、何だか分らない。」
ふう、と仰向けに胸の息づかい、乳の蔦がくれの膨みを、ひしと菅笠で圧えながら、
「巡礼に御報謝……ね。」
と、切なそうに微笑んだ。
電燈を背後にして、襟のうすぐらい、胸のその菅笠が、ほんのりと、朧に白い。
「や、お洲美さん、失礼ですが、隠して下さい、笠を透して胸が白い、乳が映る。」
「見えますか。」
「申すも憚りだが、袖で隠して。」
「いいえ、いいえ。」
おくれ毛が邪慳に揺れると、頬が痩せるように見えながら、
「嬉しい、胸が見えるんです。さ、遮るものなしに通った、心の記念に、見える胸を、笠を通して捺塗って見て下さい。その幻の消えないうちに。色が白いか何ぞのように、胡粉とはいいませんから、墨ででも、渋ででも。」
「雪が一掴みあればいいと思う。」
「信や……絵の具皿を引攫っておいで。」
「穏かでない、穏かでない、攫うは乱暴だ、私が借りる。」
胡粉に筆洗を注いだのですが。