Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

Read 私本太平記 (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 126,598 characters · 254 screens

Aozora Bunko

そして、七名の郷士との間に、ふた言三言、激越な問答が交わされたかと思うと、郷士のひとりが、突然、

「えい、面倒っ」

とばかり、役人の一名を、抜打ちに、川の中へ斬り落した。

その喚きは、この世のものとも思えなかったし、とたんにざッと舟全面に降った水玉も、悉く血であったように――尼と覚一には思われた。

あとは、我も知らない母子であった。

せまい足場に、白刃と白刃が充ち、呶号や絶叫のもつれに、舟もまた狂顛した。

が、瞬間だった。――電雷の下に耳を抑えていたような姿の覚一母子には、長いとも思われたろうが、じっさいには、あっというまに、幾人かの手負いが打ち捨てられ、郷士たちは、陸へ逃げ上がっていたのである。

ところが、陸上にも、べつな六波羅兵が駈けつけていた。だから激闘はなおつづいて、いたる所に、血をぶり撒いたにちがいない。そして、七名の郷士のうちの幾人が、生命を保って逃げえたろうか。

……やや、時が経った。舟の中は、もう何事もない。

けれど、尼も覚一も、なおまだ顔を上げえなかった。しいんと、静かなのが、自分も血ぬられている者みたいに、気味がわるい。

すると、すぐ近くの岸の上で、