Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

Read 私本太平記(七) (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 330,262 characters · 662 screens

Aozora Bunko

「つまらぬ強情を」

と、義貞はかえりみて、忠顕との論争もやや後悔されだしてきた。それは即、准后の廉子へたてをつくことにもなるからだ。

おそらく忠顕のおとずれは、廉子の命で来たものだろう。――とすれば、彼が連れて来た女性というのも、あるいは、准后腹心の局のひとりかも知れぬ。

「目をつぶろう……」

義貞は自我をなだめた。准后と事を構えて争うなどはおろかである。また争って勝てッこはない。現朝廷の妲己である。いつかは女奏の難に会おう。そのとき、腹をたてて弓をひけば、自分もまた道誉の無節操と似た者となるしかない。

すくなくも自分の忠誠は現帝の御理想へささげているのだ。道誉のごとき男、尊氏のごとき者と、同列であってはならない。産土の神も照覧あれ願文の誓いはきっとつらぬいてみせよう。――ここにただ尊氏をさえ滅ぼしてしまえばだ。道誉一人の存否などは問題でない。どうにでもなる。そのどうでもいいことに、准后のごきげんを損じ、忠顕と気まずくなるなどは、愚であった。おろかしさよと、ようやく、彼の酒気が身のうちでほのぼのと色を醸しかけていた。すると、そのときである、

「……お召しあそばしましたか」