Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Read 私本太平記(七) (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 330,262 characters · 662 screens
が、ここにもまた裏切り者があらわれた。しかもそれは少弐の娘婿、原田対馬守で、
「存ずる所あって、われらは今よりは官軍へ味方する」
と、俄に、とりでの高い所に、中黒の旗(新田方の印)を掲げ、妙恵の床几の前へ来て、
「舅殿にも、いまはお覚悟のときでしょう。これまでの盟約などにとらわれているのは愚のいたりです。あの大軍、ここの小勢、守れるものではありません」
と、降をすすめた。
「そうか」
妙恵貞経は、うめいた。
むき出しに見せられた人間の奥底のものに、わけて娘婿の豹変に、いいようのない顔いろではあったが、
「ぜひもない、わしも臍をかためよう。が、託磨、中村などを諭すあいだ、お汝はやぐらの上へあがって、わしの合図を待て。合図を見てから敵を招き入れろ」
と、言った。
原田は、急いでやぐらの上へ戻って行き、一時、降旗を巻いて、舅の合図を待っていた。
妙恵貞経が、先に尊氏の迎えに行った子の頼尚へあてて、あの悲壮な遺書を書いたのは、この瞬間のうちだった。
したため終ると、それを侍童の井筒丸に持たせて、
「そちはすぐ落ちろ」
と、搦手から出し、屈強な兵十人ほどもつけてやって、さて、左右の一族へは、いまは最期のほかなしと告げ、