Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

Read 私本太平記(七) (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 330,262 characters · 662 screens

Aozora Bunko

「できる」

「むずかしい」

「もとよりやさしくはない。百難もあろう」

「ですが、朝敵となるのをひたすら怖れてばかりいた日には、大事を成すなど思いもよらぬ難事ではありませぬか。いくら委すと仰せ下されても」

「時運はたえまなく動いているのだ。そうこだわるな。眼前の事態にのみ固着した頭脳では手も足も出せはせぬ。――やがて勅使も帰洛のうえには、何かの変も生じて来よう。打つ手も自然出てくるものだ。尊氏もここしばらくは静観しよう」

やがて、両三日後に、はやこのことは実現された。

尊氏は、細川頼春、一色右馬介らの近習小姓わずか七、八名を身につれただけで、突然、

蟄居する

の旨を内外に触れ、浄光明寺のうち深くに籠ってしまったのだった。

いきさつは直義とおもなる者しか知るところでない。一門の族党は大きな驚愕に打たれた。しごく単純な武者ばらでもある。彼らは主君の謹慎のすがたをそのまま信じた。理由なく傷んだり何かへ憤慨したりした。そして一時的ではあるが、鎌倉は冴えない景色のうちにあった。

勅使、中院ノ具光は、すでに帰洛の途にあったが、これらのことも海道では早耳に入れていたにちがいない。