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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Read 私本太平記(七) (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 330,262 characters · 662 screens
――そちらが官軍なれば我も官軍なり
我が賊ならそちらも賊
と、明らかに同等な名分を、宣揚していたからだった。
「太々しさよ!」
と、義貞は今朝から、二本松の陣地にあって、尊氏が坐乗しているにちがいない、その船列中の本船の一檣頭を、睨みとおしに、睨んでいた。
そして吐き出すように、
「あの薄あばたが、やりおりそうな狡智ではある!」
とも罵ッた。
その位置する陣地――西国街道の二本松とよぶところは――湊川(旧・湊川)を西へ渡ってすぐ、和田ノみさきから塩打山の低い砂丘を左にひかえ、右には正成の会下山を擁し、いわば大手の関門を作すものとしていい。そして彼は約八、九千の精兵を厚くおいて、
「来れ。目に物見せん」
としていたのだ。
つまり右翼に、正成。
左翼に、和田ノ燈籠台の大館氏明、経ヶ島の脇屋義助。
陣容として、鉄壁である。もし陸上だけに限られた対戦ならば、たとえ数倍の足利勢でも、これはちょっと破り得なかったろう。
だが、当の怨敵尊氏は海上だった。自然、義貞の注意はしじゅう海上へ引かれていた。――するうちに、序戦、ここの正面へ当って来たのは、少弐頼尚を主将とする筑紫諸党の兵――つまり浜の手隊の先鋒だった。