Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Read 私本太平記(七) (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 330,262 characters · 662 screens
「まず望みはない」
「正季にも、そう思われます。しかるに何で、所期の作戦を俄にかえて退かれたのか」
「それも、過ッてはいない。左中将どのは、あれでよいのだ。あれでよい」
「……とは、どういう御意中で」
「必定、新田勢は総くずれを来そう。そして好まぬことながら、左中将どのも都へさしてムチ打って落ち行くしか途もあるまい。わしは元々そうあって欲しかったのだ。正成亡きあと、主上後醍醐のきみを守護したてまつる大将といえば、やはり左中将新田殿のほかにはしかるべきお人も見えぬ。……ゆくすえ、尊氏の勢いがさらに大になるを思えば、なおさらのこと」
「ですが、全軍をあげて、生田の渚へ駈け向った新田どの。尊氏と見たら意地でも退けますまい。元々からの宿敵、かつは播磨いらい、負けを重ねている面目上、乱軍を掻き分けても、尊氏と一騎打を挑む御所存ではないでしょうか」
「いや」
正成は薄ッすらと顔をゆがめた。その眸を回らして、須磨方面へ、心を移しながら、
「尊氏は、生田へ向った水軍のうちにはいない」
「えっ、ではどこに?」
「日輪の旗を立てた大船の一つに乗って、彼処に上陸すると見せかけて、じつは別な船に乗って須磨沖にとどまり、やがていとやすやす、駒ヶ林の浜へ一勢をひきいて上陸した。