Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

Read 私本太平記(七) (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 330,262 characters · 662 screens

Aozora Bunko

「むむ! よい」

やっと、尊氏はうなずき終った。そして、

「こよいは、ここに置け。なおまた、白木の首台を設えさせて、ていねいにいたしておけよ」

と、言いたした。

しかしそれからは、いつもと変らない尊氏だった。

やがてぞくぞくとこれへ見えた斯波、細川、赤松、高などの諸将をねぎらい、また細かい報告も聞き、とりあえず、宵には堂の内で、諸将と共に戦捷の乾杯をあげた。そして同夜、直義にはまた新たな軍命をさずけて、その場から前線の山崎へ、先発させた。

直義が山崎へ立って行ったのは、夜半近い。

とすれば、はや夜明け前か。

尊氏はふと目をさますなりその直義の顔をまぶたに持った。立ちぎわに、いやな気色が見えていたからだった。

あとで弟の身になって思ってみるとむりはない。

九州いらい、陸上軍の全責任をもたせて、山陽道を攻めのぼらせ、息つくひまもなく、きのう一日じゅうの大戦だった。――だのに一夜の休息も与えず、またすぐ山崎へ急行させたのだ。

「ひどい!」

と、恨んだに違いない。

しかし、義貞を追ッかけて行った味方が、騎虎にまかせて都へ乱入などしたら始末におえぬ。先に、制止はしておいたが、一将の伝令などでは統御がつくまい。