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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Read 私本太平記(七) (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 330,262 characters · 662 screens
「おはなしあい? それは、どんなことを」
「さきに践祚はあらせられたが、新帝の光明院へは、まだ、神器のお譲りはおこなわれていない。何せ、神器の授受を見ねば、正しい天皇の御位が継承されたとは申し難い」
「それは、後醍醐のお手もとにあるのでしょうが」
「そうだ。さればこそ、内々、尊氏から切に、神器のお譲り渡しをおねがい申し出てあるのだ。さる折に、そちが事をこわしては困るではないか。……さっそくに、御待遇を、弛やかにあらためろ。……なお、それでもきかぬならぜひもない。そちを解任して、花山院の御警固は、他の者に申しつけよう。……いや、そういたしたくないのでいうのだ。直義、そちもはや三十男、わからぬことはあるまいがの」
そのご、み心も和まれてきたものか、神器は、とまれ円滑に、後醍醐から、持明院統の新帝光明院へ、お譲り渡しになることときまった。
それの正式な授受は、十一月二日におこなわれた。
すなわち、剣璽(剣と鏡と天子の印)は、一条ノ右中将実益、揚梅ノ右少将資持らがささげて、御使にたち、沿道には、折ふし入京していた近江の佐々木道誉の兵が、例の、派手やかな軍装で立ちならんだ。