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とらのきば
虎の牙/透明怪人
江戸川 乱歩
Read 虎の牙/透明怪人 (とらのきば) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N3. Tap a word for the meaning.
N3 · intermediate · modern kanji and kana · 193,761 characters · 388 screens
とびらの中に集中する懐中電灯の光。
「オッ、そこにいるゾ。」かさなりあうまるい光の中に、大きな石の獅子が、チョコンとすわっています。警官たちを見ても、逃げるでもなく、飛びかかってくるでもなく、まるで石のように身うごきもしないのです。しばらく、異様なにらみあいが、つづきました。
「おい、へんだぜ。こいつは、ほんとうの石のコマイヌじゃないか。」
ひとりの警官が、およびごしになって、グッと手をのばして、ピストルの先で、怪物の肩のへんを、つっつきました。すると、コツコツと石をたたくような音がしたではありませんか。たしかに石でできているのです。
それにいきおいをえて、みんながコマイヌのそばに近より、懐中電灯でてらしつけながら、その全身にさわってみました。ひとりの警官が、コマイヌの頭に手をあてて、グッとおすと、からだぜんたいがかたむき、手をはなすと、ゴトンと音をたてて、もとの位置にもどりました。
「ハハハ……、なあんだ、やっぱり石のコマイヌじゃないか。おい、きみ、きみは、こいつが動いたと言うのかい。」
小林少年は、夢に夢みるここちでした。
「さっきは、たしかに生きていたのです。