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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 157,440 characters · 313 screens
「ま、怖い、――でもね、八五郎親分のお言葉だが、野郎は少し変じゃありません。これでも新造のつもりよ。出来はあんまりよくはないけど、阿魔ッとか何んとかいって下さいな」
「何をッ、阿魔ッ」
「うれしい、そのコツよ」
お楽は椽側で、八五郎にしがみつくのです。
「放せッ、やい、畜生ッ」
「あれ、今度は畜生と来た、少し浅ましいわねえ」
「銭形の親分には、お静姐さんという、それはそれは貞女のおかみさんが付いているんだぜ」
「それがどうしたのさ、八五郎親分」
「その江戸一番のおかみさんを泣かして、化け猫のようなお銀なんかに、ちょっかいを出す親分じゃねえ」
八五郎は精いっぱいに見得を切るのです。八五郎に取って親分平次の恋女房お静は、神聖犯すべからざるベアトリーチェだったとは、幾度か話しました。
「おや、おや、変なことを仰しゃるわねエ。お前さんは十手捕縄を預かる立派な御用聞かと思ったら、お静姐さんの番人だったのかえ」
「何をッ」
「それともほかの女が銭形の親分を口説いちゃいけないという、御布令でも出たというのかえ」
「な、何をいやがる」
「第一、お前さんが親分の傍に、出来損いの狛犬みたいに頑張っているのが、平次親分のお気に召すかどうか、ちょいときいて御覧なさいよ」