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ぜにがたへいじとりものひかえ

鬼の面 ――銭形平次傑作選3

野村 胡堂

Read 鬼の面 ――銭形平次傑作選3 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 28,312 characters · 57 screens

Aozora Bunko

が、そんな事で敗ける男ではありません、なおも最後の気力を振り絞って、必至の襲撃を平次に喰わせようとする、眼へ、

「あッ」

二枚目の和蘭銀貨が、浪之進の左の眼を打ったのです。

「野郎ッ、くたばってしまえッ」

後ろから八五郎の十手が、飛込み様、手負いの得物を叩き落しました。あとはもう、

「神妙にせい」

キリキリと捕縄が、この凶悪無残な浪人者を縛ってしまったのです。

×          ×

岡浪之進を送った帰り、八五郎にせがまれて、平次はいつもの絵解きをしました。

「岡浪之進は、長崎屋の身上を皆んな娘のお小夜に集め、そのお小夜を手に入れるか殺すかして、終には自分のものにする気だったんだ、――ここで縛られなきゃ、四人目に殺されるのは番頭の友三郎さ」

「へエ、恐ろしい野郎ですね」

「武家のくせに、あんな悪智恵の廻る野郎はないよ、内儀のお町を殺したとき、四尺の竹垣に梯子を掛けたり、長持の棒で押しつぶして、非力の者の仕業と見せたが、実は当て身を喰わせて、目を廻さした上の仕事さ。それと気がつかないのは、俺の手落ちだったよ。尤も金之助を殺した時、水落の黒血で気がついたが――」