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あゆのくいかた
魯山人の食卓
北大路 魯山人
Read 魯山人の食卓 (あゆのくいかた) by 北大路 魯山人 (きたおおじろさんじん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 54,022 characters · 115 screens
鮎の食い方
いろいろな事情で、ふつうの家庭では、鮎を美味く食うように料理はできない。鮎はまず三、四寸ものを塩焼きにして食うのが本手であろうが、生きた鮎や新鮮なものを手に入れるということが、家庭ではできにくい。地方では、ところによりこれのできる家庭もあろうが、東京では絶対にできないといってよい。東京の状況がそうさせるのである。仮に生きた鮎が手に入るとしても、素人がこれを上手に串に刺して焼くということはできるものではない。
鮎といえば、一般に水を切ればすぐ死んでしまうという印象を与えている。だから、非常にひよわなさかなのように思われているが、その実、鮎は俎上にのせて頭をはねても、ぽんぽん躍り上がるほど元気溌剌たる魚だ。そればかりか、生きているうちはぬらぬらしているから、これを掴んで串に刺すということだけでも、素人には容易に、手際よくいかない。まして、これを体裁よく焼くのは、生やさしいことではない。
もちろん、ふつうの家庭で用いているような、やわらかい炭ではうまく焼けない。尾鰭を焦がして、真黒にしてしまうのなどは、せっかくの美味しさを台なしにしてしまうものだ。いわば絶世の美人を見るに忍びない醜婦にしてしまうことで、あまりに味気ない。