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めいせつじじょでん
鳴雪自叙伝
内藤 鳴雪
Read 鳴雪自叙伝 (めいせつじじょでん) by 内藤 鳴雪 (ないとうめいせつ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 192,693 characters · 377 screens
他の平民どもと打混じて船中に雑居するのである。
この渡船の例として、たとえば丸亀から大阪へいくら、広島または下ノ関へいくらと定め、その航路が順風であって僅かの日数で達しても、またはいかほど日数が掛っても、最初定めた船賃に増減はせない。そしてその間三度の食事も一切船の賄いであった。
私は既に船宿で食事をして乗ったが、夜に入っては船の蒲団を借りて寝た。僕も隣へ寝た。その周囲には知らぬ旅人が沢山寝ていた。多くは無作法な者ばかりであったから、変な感がして容易に眠る事が出来ぬ、その中に碇を上げ帆を捲いて船を出したが、進むに従って横波が船の腹をドサンドサンと打って動揺して、それが段々甚くなった。船に弱い私は直ぐ胸が悪くなり、遂には嘔気を催すにも到った。それを僕が親切に介抱してくれた。こんな風なのが何でも半夜さばかり掛った末に或る港へ着船した。
夜が明けて聞いて見ると、それは備前の国の田ノ口という港であった。備前の国の陸地ではこの田ノ口が最も海中に突出していたから、讃岐よりの航路が短いので、多くの船はここへ着いたものである。
そこで再び船が出るかと思うと、一向に出る様子がない。