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めいせつじじょでん
鳴雪自叙伝
内藤 鳴雪
Read 鳴雪自叙伝 (めいせつじじょでん) by 内藤 鳴雪 (ないとうめいせつ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 192,693 characters · 377 screens
せた。その次の年は、岡山県下で同じ会を開かれたが、ここでは三度ながら、私が議長を勤めて別に騒ぎも起らずと済んだ。要するに、今日でもそうだが、諸県の教育当事者が、集ったといっても、別に何一つ仕出かす事もなく、多くは互に議論を闘わして半分は物知り自慢をするという位にとどまっていた。
忘れもせぬがこの初度の教育会に、まだ広島に居る際、予て多少噂もあった薩州の私学党が、西郷を戴いていよいよ兵を挙げたという報知があった。それから帰県して見るともっぱらこの西南騒動の噂ばかりで、人心が恟々としていた。そのうち熊本城で賊を喰い止めたが、その与党が我県と海を隔ている大分県にも蜂起して、今にも我県へ攻め来りそうになった。しかのみならず、県下でも、宇和島、大洲方面には大分西郷に心を寄せる者もあって、少しも油断のならぬ状況になった。或る日警察課長の武藤某氏がこれから大洲地方へ出張するといって、部下を随えて行ったが、三、四日して帰った時は、多くの国事犯人を捕縛して来て裁判所の方へ引渡した。これは大洲と宇和島との不平党仲間で、大分県の蜂起すると共に、我県でもこれに応じねばならぬといって、密に兵器を貯えて、まず松山の県庁を襲撃するという事に申し合っていて、今やそれを実行せんとする際、武藤警察課長が入り込んで捕縛したのであった。