Japanische Klassiker mit Furigana
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あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
Lesen Sie ある偃松の独白 (あるはいまつのどくはく) von 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 132.905 Zeichen · 262 Bildschirme
どんよりした闇夜なぞは又、からだが何かに吸いつけられるようで、自分の足音が、いやに耳立つ。山では絶えて臆病風に誘われぬ私も、この夜道ばかりは、どうかすると、誰かうしろから?……と、ちょっと振りかえって見たくなる。だが、それも何やら――幼年の頃の、あるいは夢の中の、何とも言えぬ、あの無気味さ。路は大して上り下りもない、木立の中の片そばなのだが、途中、山あいに小広く、「七面ノ池」が凍りつき、池畔に、ひょろ高い枯草の穂が、ふわふわとさやめく。そこらあたりが、とりわけ、変にうそさびしい。なまじ人跡の絶えた奥山でないだけ、ましてこうした――古くから人間の魂の迷いや悩みの、深く染みついているであろう――所柄ら、そこに自分でも知らない感覚が、何か一種の妖気とか、鬼気とかいう風なものを、かぎつけるのであろうか、否か。
木の間から読経の声がもれてくると、本堂はほど近い。この声はいい、そして頼もしい。人間の声とも思えぬ、さりとて、自然の声とはちがう。何か別の妙えなる世界の消息、そういった感が深い。本堂は相当の大建築で、客殿や庫裏も手広く、坊さん方は多勢――その中には、麓の身延の方で、何か戒律を破った、その罰として、ここへ追い上げられた者もある、とか。