Japanische Klassiker mit Furigana
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あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
Lesen Sie ある偃松の独白 (あるはいまつのどくはく) von 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 132.905 Zeichen · 262 Bildschirme
温泉は真下の川べりに湧くので、石を積んだつずら折りの段々坂を、半町ばかりも下りなければならない。木々の緑と、谷水の碧とが、薄暗い坂道を上り下りする人々の顔に映える。
浴場といっても、格別何の設備もしてあるわけではない。ただ見る、巨大な滝縞のある流紋岩壁が、えぐれて半環状に洞門を開いた下に、透明な温泉は豊かに湧出して、潭をなしてたたえている。なまじいに人工を加えず、まったく天然の湧泉らしい状景を保っているのが、いかにも心地よい。岩壁に隣りあって、小山ほどもある根なし岩との間に、され切った大流木が押しつまっている、その奥の暗いはざまから、熱泉はゴクゴクと音を立て、間断なくささ波を寄せて流出してくる。その渦を巻いて深く湛えた中に身をひたすと、忽ねん、五体が拡放され、四周の自然と渾然ひとつになって、流動する快感がある。湯は適温というより、むしろ熱いくらいだ。湯壺のすぐ外には、ささやかな石畳みの防波堤をへだてて、黒部本流の早瀬が、絶壁のあわいから、絶壁のあわいへと、冷えた寒天に似た肌を震わせて、岩を厚くおおいかぶせ、あるいはむごく岩に突き当って、硝子をぶっ欠いたように飛散している。