Japanische Klassiker mit Furigana
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あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
Lesen Sie ある偃松の独白 (あるはいまつのどくはく) von 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 132.905 Zeichen · 262 Bildschirme
――冬お出でなさい。山が雪でまっ平らになるから、どこでも勝手に歩ける。羚羊の生き皮で作った足袋は温かいもので、その上にカンジキをつける……そうした助七の話は、私を夢心地にしたものだ。殺生は好まない私も、全山雪に埋れた峯々、彼らがそこを我がもの顔にかけ歩くところは、見たい気がした。――鉄砲があれば出やしない――今打ったとて、夏は毛も肉も悪いから、冬まで生かしておいた方がいい……そんな事を未練らしく呟きながら、二人の執念の鬼も、やっと狐が落ちたような顔つきで、熊から離れる。
車百合が咲き、行者にんにくが咲くに至って、雪はきわまり、谷も窮わまって、草をたよりに峯へかかる。偃松が、既にして枝をさし延べるから、この手を借りて、急斜面の滑る草根をふみしめる。ついに蒼黒い偃松の海に乗り入って、破砕された岩砂の緩やかに波打つ峯頭へ身を投げ出す。そこは大蓮華山が西方の一脚、清水の尾根、二千五百何十メートルの一点だ。
もう天空よほど広く、黒部の絶谷をさしはさんで、競い立つ大山脈の峯頭が、互に放射し合う白冷の閃光の、梭をなして飛び交う真只中にある。東には真近く頭上に、大蓮華本山から鉢ガ岳、雪倉、赤男、朝日……と、形こそ緩やかだが、その新火山岩片をちりばめた、怪しい斑紋のある、はれぼったい肌から、混濁した魔的な紫光を放つ。