Japanische Klassiker mit Furigana
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あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
Lesen Sie ある偃松の独白 (あるはいまつのどくはく) von 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 132.905 Zeichen · 262 Bildschirme
仕事にかまけて聞き流したが、しばらくたつと、勝手の方がざわめいて、大勢掛りで何か担ぎ込んだ。下りて見ると――熊だった。熊にしては、あのさりげない銃声は、少し無雑作すぎるような気がした。それに峻険な山壁の難場から、背負い出すため、解体して来たから、見る影もない有様だ。頼んで肉を分けてもらった。まるで真紅の鬼芥子の花が、乱れ咲いたか、と思うばかりの大塊――それを葱と一緒に煮ながら食えば、その味は飽くまで豪宕といった趣きだが、また思いもよらず豊脆なのに驚く。牛肉なぞの及ぶところではない。山の地酒が、よくその味に調和して、重々しく太々しい酔い心地だ。谷の轟音が八重の夜雲を突き破って、星斗の現われ出る快さがある。
猿の肉も、おりおり膳にのぼる。これは味が至って軽く、むしろ鶏などに近い。その外、食用にはならぬが、栗鼠やむささびなどがとれる。むじなもいるが、これはなかなかとれないものだそうである。
十月に入って、日は目に立って短くなる。心細くもあわただしい。上流の山壁の霜葉は日に日に爛れて、岩自身がもみじしたかと疑われる、それがしみじみしい片光線に照らし出されるのは、見るも肌寒く身がしまる。