Japanische Klassiker mit Furigana
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おみつかんざし
お美津簪
山本 周五郎
Lesen Sie お美津簪 (おみつかんざし) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.158 Zeichen · 26 Bildschirme
三
湯呑を掴んだ正吉の手がぶるぶると慄えた。正吉はそれを膏ぎった女の背中へ叩きつけようとした。――すると不意に恐ろしい咳がこみあげて来た、正吉は湯呑を投げ出し、両手で喉を掴みながら、こんこんと咳き入りつつそこへうち倒れた。……苦しさに固く閉じた眼蓋の裏へ、いましがた夢で見たお美津の、なつかしい顔がまざまざと見えて来た。
三
初めて江戸へ出て来た時の事が思われる、十二の年だった。故郷の長崎から父に伴われて来ると、同郷の筑紫屋茂兵衛の店へ奉公に入った。筑紫屋は江戸でも有数の唐物商(現今の貿易商)で、日本橋本町に間口十二間の店と、五戸前の土蔵を持った大店だった。――茂兵衛には男子がなくて、お綱とお美津という二人の娘がいた。父親同志が故郷での親友だったので、正吉は他の奉公人たちとは別に目をかけられ、二人の娘とは友達のようにして育った。
正吉は気質も好く、人品も優れているうえに、人並以上の敏才だったので、茂兵衛はやがて姉娘のお綱の婿に直し、筑紫屋の跡目を継がせようとした。――ところがその時分、正吉は妹娘のお美津と、私かに恋を語るようになっていた。そして或る日……奥土蔵の中で、二人が罪のない逢曳をしているところを番頭の一人に発見された。