Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かげろうのにっき

かげろうの日記

堀 辰雄

Lesen Sie かげろうの日記 (かげろうのにっき) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.890 Zeichen · 60 Bildschirme

Aozora Bunko

その最初の時からして、あの方と云ったら外のお方とは変ったなされ方で、普通だったら下じもの女にでもその御文を届けさせようものを、あの方は役所で私の父に先ず真面目とも常談ともつかずに仄めかされて置いて、こちらでそれをどう思おうなんぞという事には少しもお構いなさらずに、或日、馬に乗った男に御文を持って来させられた。その使いの者がまた使いの者で、「どなた様から」と訊かせることも出来ない程、はしゃぎ切っていたので、こちらの方ではしかたがなしにその御文を受取ってしまってから、はじめてそれが柏木様からのものである事を知ったのだった。が、見れば、御料紙なんぞもこういう折のにかなったものではなかったし、大層御立派だとお聞きしていた御手跡もこれはあの方のではないのではあるまいかと思われる程のものだったし、どうもすべてが疑わしいので、御返事はどうしたものだろうかと迷っていると、昔気質の父はしきりに恐縮がって、「やはりお出しなさい」と私に無理やりにそれを書かせた。それをきっかけにして、それからもあの方は屡私に同じような御文をおよこしになったけれど、最初のうちは私の方ではそれほど熱心になれず、返事も出したり、出さなかったりしていた位だった。