Japanische Klassiker mit Furigana
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かげろうのにっき
かげろうの日記
堀 辰雄
Lesen Sie かげろうの日記 (かげろうのにっき) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.890 Zeichen · 60 Bildschirme
その二
のが、折から秋の長い夜々のこととて、ともすれば私は目覚めがちなものだから、いくら聞くまいと思っていても、手にとるように耳にはいってくる事がある。そんな時などには「何とかしてあれだけは聞かずにいたいものだが――」と思いながら、しかもその一方では、いましがた私の家の前をつづけさまに咳をなさりながらお通りすぎになったあの方が、だんだんその咳と共に遠のいて往かれるのを、何処までも追うようにして、私は我知らず耳を側立てているのだった。……
その二
それから十年ばかりと云うもの、私の父はずっと受領として遠近の国々へお下りになっていた。たまさかに京へお上りになっても、四五条のほとりにお住いになるので、一条のほとりにあった私の家とは大へん離れていた。それで、こうやって私たちが人少なに住んでいた家は、誰も取り繕ってくれるような者なんぞ居なかったので、次第次第に荒れまさって来るのを、私はただぼんやりと眺めながら、漸く成長して来る道綱一人を頼みにして、その日その日をはかなげに暮しているばかりだった。
そのうちにやっとその幼い道綱が片言まじりに物が言えるようになって来たが、それも、いつ聞き覚えたのか、あの方がいつもお帰りの時に、「そのうちに又――」