Japanische Klassiker mit Furigana
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かげろうのにっき
かげろうの日記
堀 辰雄
Lesen Sie かげろうの日記 (かげろうのにっき) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.890 Zeichen · 60 Bildschirme
今宵だけでもと思ってわたくしは此処へ参っているのです。もう夜も更けておりましょう。早くお帰りなさいませ」と返事をさせた。それからそんな文の往復を何度となく為合った。一丁ほどの石段を上ったり下りたりしなければならないので、それを取り次いでいた道綱は、しまいには疲れ果てて、ひどく苦しそうな位にまでなった。その上、殿が、これ位の事がとりなせないのか、腑甲斐ない奴だな、などと大へん御気色が悪いと言って、いかにも切ながっていた。それを見ていた側の者たちはしきりに不便がっていたが、私は何処までも自分を守り通して拒絶したので、あの方もとうとう「よしよし、おれは穢れがあるからこのままこうしても居られない、車をかけてくれ」と仰ゃってそのまま御帰りなさるらしかった。私が覚えずほっとした気もちでいると、思いがけず、道綱までが、「まろもお送りして往きます。お車の後へでも乗せて往っていただきましょう。そうしてもう二度とまろもこちらへは参りませんから」と言い残したぎり、泣き顔をして出て往ってしまった。どんな事になったってこの子だけは自分のものだと思っていたのに、まあ、この子まで、何んて酷いことを言うのだろうと呆れながら、私はもう物も言えずにいた。