Japanische Klassiker mit Furigana
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こころ
こころ
Lesen Sie こころ von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.915 Zeichen · 322 Bildschirme
二
私は鞄の中から卒業証書を取り出して、それを大事そうに父と母に見せた。証書は何かに圧し潰されて、元の形を失っていた。父はそれを鄭寧に伸した。
「こんなものは巻いたなり手に持って来るものだ」
「中に心でも入れると好かったのに」と母も傍から注意した。
父はしばらくそれを眺めた後、起って床の間の所へ行って、誰の目にもすぐはいるような正面へ証書を置いた。いつもの私ならすぐ何とかいうはずであったが、その時の私はまるで平生と違っていた。父や母に対して少しも逆らう気が起らなかった。私はだまって父の為すがままに任せておいた。一旦癖のついた鳥の子紙の証書は、なかなか父の自由にならなかった。適当な位置に置かれるや否や、すぐ己れに自然な勢いを得て倒れようとした。
二
私は母を蔭へ呼んで父の病状を尋ねた。
「お父さんはあんなに元気そうに庭へ出たり何かしているが、あれでいいんですか」
「もう何ともないようだよ。大方好くおなりなんだろう」
母は案外平気であった。都会から懸け隔たった森や田の中に住んでいる女の常として、母はこういう事に掛けてはまるで無知識であった。それにしてもこの前父が卒倒した時には、あれほど驚いて、あんなに心配したものを、と私は心のうちで独り異な感じを抱いた。