Japanische Klassiker mit Furigana
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こころ
こころ
Lesen Sie こころ von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.915 Zeichen · 322 Bildschirme
私はできるだけ父を慰めて、自分の机を置いてある所へ帰った。私は取り散らした書物の間に坐って、心細そうな父の態度と言葉とを、幾度か繰り返し眺めた。私はその時また蝉の声を聞いた。その声はこの間中聞いたのと違って、つくつく法師の声であった。私は夏郷里に帰って、煮え付くような蝉の声の中に凝と坐っていると、変に悲しい心持になる事がしばしばあった。私の哀愁はいつもこの虫の烈しい音と共に、心の底に沁み込むように感ぜられた。私はそんな時にはいつも動かずに、一人で一人を見詰めていた。
私の哀愁はこの夏帰省した以後次第に情調を変えて来た。油蝉の声がつくつく法師の声に変るごとくに、私を取り巻く人の運命が、大きな輪廻のうちに、そろそろ動いているように思われた。私は淋しそうな父の態度と言葉を繰り返しながら、手紙を出しても返事を寄こさない先生の事をまた憶い浮べた。先生と父とは、まるで反対の印象を私に与える点において、比較の上にも、連想の上にも、いっしょに私の頭に上りやすかった。
私はほとんど父のすべても知り尽していた。もし父を離れるとすれば、情合の上に親子の心残りがあるだけであった。