Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
こころ
こころ
Lesen Sie こころ von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.915 Zeichen · 322 Bildschirme
その庭に、この間まで重そうな赤い強い色をぽたぽた点じていた椿の花はもう一つも見えなかった。先生は座敷からこの椿の花をよく眺める癖があった。
「信用しないって、特にあなたを信用しないんじゃない。人間全体を信用しないんです」
その時生垣の向うで金魚売りらしい声がした。その外には何の聞こえるものもなかった。大通りから二丁も深く折れ込んだ小路は存外静かであった。家の中はいつもの通りひっそりしていた。私は次の間に奥さんのいる事を知っていた。黙って針仕事か何かしている奥さんの耳に私の話し声が聞こえるという事も知っていた。しかし私は全くそれを忘れてしまった。
「じゃ奥さんも信用なさらないんですか」と先生に聞いた。
先生は少し不安な顔をした。そうして直接の答えを避けた。
「私は私自身さえ信用していないのです。つまり自分で自分が信用できないから、人も信用できないようになっているのです。自分を呪うより外に仕方がないのです」
「そうむずかしく考えれば、誰だって確かなものはないでしょう」
「いや考えたんじゃない。やったんです。やった後で驚いたんです。そうして非常に怖くなったんです」