Japanische Klassiker mit Furigana
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あわもりものがたり
『たぬき汁』以後
佐藤 垢石
Lesen Sie 『たぬき汁』以後 (あわもりものがたり) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 118.470 Zeichen · 244 Bildschirme
しかし、その甲斐はない。
祖父の裕八郎が家出したと同じころの秋がきたとき、これもまた掻き消すように長屋門の前から姿を消した。祖母のみよは、狂気のようになって悲しみ、清一や清一やと、毎日泣き叫んだが、詮ないことであった。
どの嫁もどの嫁も必ず男の子を生むこと、その子が二歳になると必ず当主が家出して、行衛不明となるということが、この近郷近村の謎のたねとなっている。これは、石坂家では美しい男ばかり生むから、越後国彌彦山に棲む※(「玄+少」、第4水準2-80-57)太郎婆あさんと呼ぶ雪女に、攫われて行くのであると村人は信じているのであるという。
四
昭和二十一年の雪解けの季節、つまり今年のゆく春のころである。賢彌は、村の青年たち数人と共に草津温泉から渋峠を越えて、信州の熊の湯へ旅行を志した。賢彌は、十九歳になっている。
草津温泉を出発して一里半、真っ白に聳える白根火山を行く手に見る香草温泉あたりに雪割草が咲いていた。雪解け頃というけれど、香草温泉からの登りは、流石に未だ雪が深かった。それに、次第々々に坂道は匂配を加えてきた。標高六千余尺の上信の国境をなす渋峠の頂上まで達したときには、日ごろ健脚でない賢彌は友人から十数町も引き離されて遅れていた。