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Japanische Klassiker mit Furigana

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つゆのあとさき

つゆのあとさき

永井 荷風

Lesen Sie つゆのあとさき von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.725 Zeichen · 148 Bildschirme

Aozora Bunko

ああいう女が東京の市街に現れて来たのも、これを要するに時代の空気からだと思えば時勢の変遷ほど驚くべきものはない。翻って自分の身を省れば、あの当時、法廷に引出されて涜職の罪を宣告せられながら胸中には別に深く愧る心も起らなかった。これもまた時代の空気のなす所であったのかも知れない。月日はそれから二十年あまり過ぎている。一時はあれほど喧しく世の噂に上ったこの親爺が、今日泰然として銀座街頭のカッフェーに飲んでいても、誰一人これを知って怪しみ咎めるものもない。歳月は功罪ともにこれを忘却の中に葬り去ってしまう。これこそ誠に夢のようだと言わなければなるまい。松崎は世間に対すると共にまた自分の生涯に対しても同じように半は慷慨し半は冷嘲したいような沈痛な心持になる。そして人間の世は過去も将来もなく唯その日その日の苦楽が存するばかりで、毀誉も褒貶も共に深く意とするには及ばないような気がしてくる。果して然りとすれば、自分の生涯などはまず人間中の最幸福なるものと思わなければならない。年は六十になってなお病なく、二十の女給を捉えて世を憚らず往々青年の如く相戯れて更に愧る心さえない。