Japanische Klassiker mit Furigana
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つゆのあとさき
つゆのあとさき
永井 荷風
Lesen Sie つゆのあとさき von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.725 Zeichen · 148 Bildschirme
八
だから、その時にはどなただか気がつかなかったのよ。だけれど、わたしお連の方に出たもんだから、後ですっかり話をきいてしまったのさ。お前さんがちょいちょい千代田家さんへ行くことを能く知っている芸者衆があるんだよ。家が隣合っているものだから、窓からよく見えるんだとさ。お座敷でその芸者衆が先生とは知らずにお前さんのはなしをしたんだとさ。何しろ此処じゃはなしができないから、わたし明日かあさって、おばさんにも用があるから、ゆっくり行って話をするわ。とにかくあすこはよした方がいいよ。」
「そう。そんな事があったの。じゃ待ってるわよ。」
近処の犬だの、箱屋だの、出前持だの、芸者などが、絶え間なく通過るので、二人は立談もそこそこに右と左へわかれた。
八
良人の起るのは大抵正午近くなので、鶴子は毎朝一人で牛乳に焼麺麭を朝飯に代え、この年月飼馴らした鸚鵡の籠を掃除し、盆栽に水を灌ぎなどした後、髪を結び直し着物をきかえて、良人の起るのを待つのである。その日の朝牛乳と共に女中の持って来た郵便物の中に、番地も宛名も洋字で書いた一封があったので、何心なく手に把ると、自分へ宛てたもので、その筆蹟にも見覚がある。