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Japanische Klassiker mit Furigana

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つゆのあとさき

つゆのあとさき

永井 荷風

Lesen Sie つゆのあとさき von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.725 Zeichen · 148 Bildschirme

Aozora Bunko

その時静に襖の明く音がして、屏風の前に立った男の姿を、誰かと見れば昨夜から名残惜しく思っていた木村義男である。

「あら。」と君江はわずかに顔を擡げながら、起直りもせず、仰向きに臥たまま両腕をひろげ、木村が折屈むのを待って、ぐっと引寄せながら、「わたし、夢を見ていたのよ。」

暫くして後木村は昨夜銀細工の鉛筆を落したから、もしやと思って捜しに来たことを告げた。

二人は起きて、表座敷で料理の肴に箸をつけた時、女給の瑠璃子から電話がかかった。瑠璃子は昨夜君江から頼まれた通り、狼狽した振りで本村町へ行き、清岡先生に三番町の千代田という家へ行った事を告げると、先生は俄に不快な顔色をして、いろいろ弁解するのも聴かず、途中から自分を振捨てどこへか行ってしまった。その事を知らせたいと思って今まで君江の来るのを待っていたが、三時の出番にも姿が見えないので、最初に肴屋へ呼出しの電話をかけ、おばさんの返事から推量して、更に電話をかけて見たという事である。

日が暮れて飯を食べてしまうと、木村は明日丸円劇場の初日なので、これから稽古に行かなくてはならないと、急いで仕度をした後、特等の座席券を五、六枚、カッフェーの女給さんたちに売ってくれと頼んで、そのまま晩飯の代も自動車賃も払わずに帰ってしまった。