Japanische Klassiker mit Furigana
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つゆのあとさき
つゆのあとさき
永井 荷風
Lesen Sie つゆのあとさき von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.725 Zeichen · 148 Bildschirme
むかしはむかし今は今だ。」と取って付けたように笑いながらも、絶えずそれとなく四辺に気を配っているらしく、何とつかずそわそわしている。年はその時分既に四十五、六になっていたが、白髪もさして目につかず、中肉中丈の後姿は、若い妾とつれ立って散歩に出かける時などは、随分様子のいい血気盛の男に見まがうほどであったが、今見れば、妙に黄ばんだ顔一面、えぐったような深い皺ができ、蓬々とした髪の毛の白くなったさまは灰か砂でも浴びたように爺むさく、以前ぱっちりしていただけ、落窪んだ眼は薄気味のわるいほどぎょろりとして、何か物でも見詰めるように輝いている。
「その時分はいろいろ御世話になりまして。」と君江は挨拶にこまって、思出したように礼を述べた。
「やっぱりこの辺にいるのかい。」
「市ヶ谷の本村町におります。」
「そう。じゃ、またその中、どこかで逢うだろう。」とそのまま行きかけるので、君江は住処だけでも聞いて置きたいと思って、二歩三歩一緒に歩きながら、
「おじさん。京子さんにお逢いになって。わたしその後はしばらく逢いません。」と鎌を掛けて見た。
「そうか。富士見町に出ているそうじゃないか。