Japanische Klassiker mit Furigana
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つゆのあとさき
つゆのあとさき
永井 荷風
Lesen Sie つゆのあとさき von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.725 Zeichen · 148 Bildschirme
誰も知っているはずがない事なんですもの。」
「占いでわからなければ、今度は巫女か、お先狐にでも見てもらうんだな。」
「巫女ッて何。」
「知らないのか、よく芸者なんぞが見てもらうじゃないか。」
「わたし、占者だって全く昨日が始てですもの。何だか馬鹿馬鹿しいような気がするから、ああいう事はわたしには駄目よ。」
「だから、気にしない方がいいッて僕は最初からそう言ってるじゃないか。」
「でもあんまり不思議なんですもの。知れようはずのない事が知れたんですもの。まったく不思議だわ。」
「自分ばかり知れないと思っていても、世の中には案外な事があるからね。秘密はかえって漏れやすいものさ。」と言い終って清岡は自分から言過ぎたと心付き、急いで煙草を啣えながら君江の顔色を窺うと、君江の方でも何か言おうとしたのをそのまま黙って、飲みかけた湯呑を口の端に持ち添えたまま、じろりと清岡の顔を見たので、二人の目はぴったり出遇った。清岡は煙草の烟にむせた風をして顔を外向け、
「何でも気にしないのが一番いいよ。」
「ほんとうねえ。」と君江の方でも心からそう思っているらしく見せかけるために、声まで作ったが、それなり後の言葉が出て来ないので、湯呑の茶をゆっくり飲干して静に下に置いた。