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Japanische Klassiker mit Furigana

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つゆのあとさき

つゆのあとさき

永井 荷風

Lesen Sie つゆのあとさき von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.725 Zeichen · 148 Bildschirme

Aozora Bunko

君江は昨夜矢田と神楽坂へ泊った事は知られていないにしても、何しろ二年越しの間柄なので、何事に限らず大抵の事は清岡には知られていると思っているが、さてどの辺まで知られているか、それは君江にも当がつかない。君江は何か好い折があったら、清岡とは関係を断ってさっぱりとして、自分の過去の事を少しも知らない新しい恋人を得たいという気にもなっている。君江はどういう訳だか、自分の平生を人に知られている事を好まない。秘密にする必要がない事でも、君江は人に問われると、唯にやにや笑いにまぎらすか、そうでなければ口から出まかせな虚言をつく。最親しいはずの親兄弟に対しては君江は一番よそよそしく決して本心を明した事がない。自分の方から好きだと思う男に対してはなお更の事で、その男が何か深く聞知ろうとすればいよいよ堅く口を閉じて何事をも語らない。同じ店につとめているカッフェーの女給連は、君江さんほど姿の優しいしとやかな人はないが、不断何を考えているのやらあれほど訳のわからない人もないと言われているのである。

清岡が君江を識ったのは君江が始めて下谷池の端のサロン、ラックという酒場の女給になったその第一日の晩からであった。