Japanische Klassiker mit Furigana
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つゆのあとさき
つゆのあとさき
永井 荷風
Lesen Sie つゆのあとさき von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.725 Zeichen · 148 Bildschirme
果してそうだとすると、実に気の毒な事だ。何となく親の身として申訳のないような心持がして来るので、その後老人は図らず新宿の停車場で出会った時は此方から呼びかけたくらいであった。それらの事から、鶴子はいつともなく世田ヶ谷の隠宅へ出入することを許されるようになったのであるが、しかし進との間柄については、二人とも何やら互に遠慮して、問いもせず言いもせず、そのままになっている。生計の事ではその後進は莫大な収入がある身となっているし、老人の質素な生活は恩給だけでも有り余るほどなので、互に家事向の話の出べき所がないわけであった。
世田ヶ谷の家には庭掃除の下男と雇婆がいるものの、鶴子は老人が日々の食事を始め衣類や身のまわりの事に不自由しているらしいのを見て、それとなく陰へ廻って気のつくかぎり世話をするようになった。表向きお世話をするといえば老人はきっとそれには及ばないと言うにちがいはない。かつまた、清岡の家には既に或医学博士に嫁した姉娘もあるので、鶴子はその手前をも憚って、何事も目に立たないようにひかえ目にしている。その態度や心持は月日と共におのずから老人の眼にもわかるようになったので、老人はいよいよ鶴子の胸中を気の毒に思い、心窃に倅進の如きものの妻にはむしろ過ぎたものと感服しなければならぬようになった。