Japanische Klassiker mit Furigana
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つゆのあとさき
つゆのあとさき
永井 荷風
Lesen Sie つゆのあとさき von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.725 Zeichen · 148 Bildschirme
いずれが真実やら、清岡は定めかねているのみならず、君江が始めどうしてこの家の二階を借りたのやら、そして何故、もっと場所柄のいい綺麗な家へ引移らずにいるのやら、その事情もはっきり知ることが出来ないのである。老婆は中尉の妻だったというが、現在の様子や物の言いざまから見れば、本所浅草辺の路地裏によく見るような老婆で、生れも育ちも好くない事は、酒屋の通帳がやっと読める位。洋服を着て髯を生した人をわけもなく尊敬する事などから万事は大抵想像されるのである。清岡はこの老婆に向って、自分の来ない間君江が何をしているかを、今更きいて見たところで、何の得るところもないだろうと思っているので、日頃の欝憤などは顔色にも現わさず、努めて機嫌のいい調子をつくり、
「カッフェーへ行くといろいろな人に逢うんで実に困るのだよ。だから夜は前を通ってもなりたけ入らないようにしているのさ。」
「それが能御在ますよ。御身分のある方はつい人が目をつけて、何の彼のと噂をしたがるもんですからね。オヤもう十一時ですね。」と婆は隣の時計の鳴る音を聞きつけ、箪笥の上の八角時計を見上げ、
「旦那、もう一時間お待ちになればいいんでしょう。