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Japanische Klassiker mit Furigana

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つゆのあとさき

つゆのあとさき

永井 荷風

Lesen Sie つゆのあとさき von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.725 Zeichen · 148 Bildschirme

Aozora Bunko

待ってお上げなさいましよ。火鉢に火でもついで置きましょう。」

「おばさん。何も今夜にかぎった事じゃない。あしたゆっくり来るからさ。」と清岡は敷島の袋を袂に入れたが、婆は最初から清岡が時ならぬ時分この近所を徘徊していたらしい様子といい、また日夜見知っている君江のふしだらとを思合せて、大抵それと察しながら、これもわざと気のつかない振をして、

「それでも旦那、お待たせして置かないと、後で君江さんに叱られますから。」

「だまっていれば知れやしない。」

「それでも何だかわたしの気がすみませんからさ。酒屋の電話をかりて掛けて来ましょう。」と婆は長火鉢の曳出しをさぐって、電話番号をかいた紙片を取り出した。

「それじゃ、とにかく帰るまで二階にごろごろしていよう。十二時には帰って来るにきまっているんだから、電話なんぞ掛けないでもいいよ。」と清岡は立ちかけて、「おばさん、留守番をしているから、何なら湯へ行ってお出で。」

清岡は老婆を銭湯にやり、二階へ上って、秘密の手紙でもあったら手に入れようという下心。老婆は前々から不意の事が起ったら電話で知らせるようにと君江からくれぐれも頼まれているので、銭湯への道すがら酒屋か薬屋から電話をかけるつもりで、電話番号の紙片を帯の間にはさみながら出て行った。