Japanische Klassiker mit Furigana
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ドナウげんりゅうこう
ドナウ源流行
斎藤 茂吉
Lesen Sie ドナウ源流行 (ドナウげんりゅうこう) von 斎藤 茂吉 (さいとうもきち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.565 Zeichen · 44 Bildschirme
冬枯の草で蔽われているところを田鼠が恣に歩くので、掘りかえされた土が小さい山の様になって幾つも見えていた。そのうち、汽車が走るにつれて、畑の間を一直線に流れている水が見えたり、白樺の林が松林になり、樅林になり、落葉樹林になる。けれども大体の風光は、ゆるやかな勾配を持った畑と草野から成立っていると謂っていい。これは墺太利でも同じである。
僕は民顕の停車場から買って来た新聞を読むと、それに日本人の記事があった。北米合衆国で日本の移民問題が紛糾しかかった時に、その記事がちょいちょい独逸の新聞にも載った。きょうの日本人に関する記事というのも、自然亜米利加との問題からの連想であった。未だ大戦の起らぬだいぶ前に記者は露西亜に旅したことがある。その同じ列車に日本の留学生も五六人いた。ある時、汽車の旅の無聊に、みんなが餐を共にし、酒も飲んだ。日本の留学生の二三は快活に飲み快活に話したが、二三の留学生は黙々として何も語らない。ところが其の沈黙の一人が何かのはずみに、『私どもは天皇のために命を捨てることなどは何でもありません』と云った。これが記者には何かを暗指している異様な響で聞こえたのであった。