Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ドナウげんりゅうこう

ドナウ源流行

斎藤 茂吉

Lesen Sie ドナウ源流行 (ドナウげんりゅうこう) von 斎藤 茂吉 (さいとうもきち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.565 Zeichen · 44 Bildschirme

Aozora Bunko

二

けれどもその間は十分間ぐらいに過ぎなかったであろう。窓外には緩い線の丘から赤い屋根が見えたり隠れたりしている。畑の小路に十字架の耶蘇が祭ってある。小さい沼が見えて静かな水が湛えている。国家ということを思う。民族ということを思う。コスモポリートのことを思う。併しそういう観念はいつのまにか朦朧となってしまうのであった。

二

車内で少しの間まどろんだとおもうと、汽車は Augsburg に著いた。寺院の大きいのなどが見え、家屋も急に高くなったように思えた。ひとりの貧しい身装をした娘が、汽車の窓のところに来て、麺麭と燻肉と復活祭の卵を売ろうとしている。Osterei! Osterei! と細いこえでふれて歩いているのが、何となくものあわれである。卵は一様に褐色に色づけてあったり、色々の模様があったりした。僕の近所では誰も買うものはない。僕は一寸こころが動いたが、心中に何物か抑制するものがあって到頭その卵を買わずにしまった。

停車場に、殺人犯の者を幾百マルクの懸賞で捜す警察署の貼紙がある傍に、手提かばんを盗まれて、二十金貨マルク懸賞の小さい貼紙などのあるのも目についた。