Japanische Klassiker mit Furigana
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ぼしぞう
久生十蘭短篇選
久生 十蘭
Lesen Sie 久生十蘭短篇選 (ぼしぞう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 48.344 Zeichen · 96 Bildschirme
に似たやるせないほどの愛情で胸をつまらせた。
膳がひかれて薄茶が出ると、やすは茶碗を手に持ったまま杜松子のほうへ向きかえて、
「だしぬけにみょうなことをおたずねいたしますが、あなたさまのお母さまは、昭和十二年の暮にマルセーユへおいでになったことはございませんでしたか。古いことでおぼえていらっしゃらないかもしれませんけど」
「昭和十二年というと三十七年のことですわね。よくおぼえていますわ。十二月の二十八日の朝、どうしてもマルセーユまでお迎えしなければならない方がおいでになったともうしまして、大急ぎで発って行きました」
「あたくしがちょうど日本から着いたばかりのところを、あなたさまと瓜二つなご中年の方にいろいろとお世話いただきましたが、すると、やはりあなたさまのお母さまでいらしたのですね。お名前を伺うのを忘れて、お礼もうしあげることも出来ませんでしたが、その後、お母さま、ごきげんよくっていらっしゃいますか」
杜松子は下眼にうつむいて、
「母はマルセーユからサン・レモへまいります途中、自動車といっしょに崖から落ちて亡くなりましたの」
「それはどうも。一月元旦にエッフェル塔のそばを自動車でお通りになるのをお見かけしましたが、するとそれが」