Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠6
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠6 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 185.112 Zeichen · 362 Bildschirme
それですから、わたくしの眼は、全く闇の中へ落ちきった眼でございますけれど、そのお方のは、天にも登らず、闇にも落ちない業にからまれた眼でございます。それに、わたくしが、どうしても不思議でたまらないと思いますのは、前に、わたくしはその方と一度、逢ったことがあるんでございます。どうしてそれがわかったかと申しますと、駕籠の中で咳をなすった時に気がつきました。いつぞやの晩、神田の柳原の土手というところを通ります時分に、わたくしは怖いものに出会しました、怖ろしいことをして、人を嬲殺しにしているお方がありました、その方が、つまり今夜、尺八を吹いて、駕籠に揺られてこちらの方へおいでになった方なんでございます。その尺八のうちに、本手の『鈴慕』というのをお吹きになりましたね。俗曲の『恋慕』とは違いまして、『鈴慕』と申しますのは、御承知でもございましょうが、普化禅師の遷化なさる時の鈴の音に合せた秘曲なんでございます、人間界から、天上界に上って行く時の音が、あれなんだそうでございます。わたくしはその方がお吹きになった『鈴慕』を聞きまして、下総小金ヶ原の一月寺のことを思い出しました。