Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠6
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠6 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 185.112 Zeichen · 362 Bildschirme
米友がこいつだと言ったのは、勿体なくも大聖不動尊の掛軸でありました。かなり大きな軸であるが、ずいぶん煤け方がひどいものであります。しかしながら、右手に鋭剣をとり、左手に羂索を執り、宝盤山の上に安坐して、叱咤暗鳴を現じて、怖三界の相を作すという威相は、その煤けた古色の間から燦然と現われているところを見れば、またかなりの名画と見なければなりません。
日頃、ここに掛けられてあったのを、竜之助はもとより見ず、米友だけが毎日見ていたけれども、この男は別段に不動尊の信者ではありません。
「いやに怖かない面をしている奴だな」
米友は、時々、こんなことを考えて画像を見るくらいのものでありましたが、今は室内を見廻した眼がギックリとそこに留まると米友が戦慄しました。米友をグッと睨みつけている現青黒影大定徳不動明王の姿はまさしくたった今、夢に現われたその者の姿に紛れもないことです。米友は不動尊の画像を睨めて、我と慄え上りました。
米友が不動尊の像を睨んでいる時に、裏の雨戸をホトホト叩く音がしました。
「モシ」
微かながらも人の声がしました。
「はてな」
米友が思案に暮れたのは、もしや竜之助が帰ったのではあるまいかと思ったそれが、まさしく女の声であったからであります。