Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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てんしゅかくのおと

天主閣の音

国枝 史郎

Lesen Sie 天主閣の音 (てんしゅかくのおと) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 38.941 Zeichen · 79 Bildschirme

Aozora Bunko

七

どっちみち好かねえ爺く玉さね。帰ってくんな。帰れってんだ! それとも用でもあるのけえ。お合憎様ご来客だ。今夜は不可ねえ、出直して来な」

すると戸外の老人の声が、空洞の鉄棒を伝わって、すぐ耳元で話すかのように、明瞭部屋の中へ聞えて来た。

「お若えの、お若えの……」変に気味の悪い声であった。

「糞でも喰らえ! 巫山戯やがって! 四十の男をとらまえて、お若えのとは何事だ! 尤もお前よりは若えがな」

「花をやろう、珍らしい花だ」

「ままにしやがれ! 仏様じゃァねえ! 花を貰って何んにする」

「珍らしい花だ。眠花だ。唐土渡来の眠花だ」

「唐土渡来の眠花だって?」香具師はチラリと眼を顰めたが「折角だが用はねえ」

「お若えの、お若えの」老人の声は尚つづいた。「天主で聞える唸り声! 止すがいい、一人占めはな!」

七

「む」と香具師は息を詰めた。

途端に写っていた鏡面の、老人の姿がフッと消えた。後には蒼茫たる月光ばかりが、鏡一杯に溢れていた。

小林九兵衛の報告を聞くや、尾張中納言宗春は、ひどく香具師へ興味を持った。

そこは豪放活達の彼で、香具師を城内へ召すことにした。使者の役は九兵衛であった。