Japanische Klassiker mit Furigana
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てんしゅかくのおと
天主閣の音
国枝 史郎
Lesen Sie 天主閣の音 (てんしゅかくのおと) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 38.941 Zeichen · 79 Bildschirme
五
……其方、此処に警戒し、彼奴の様子を窺うがいい。立ち去るような気勢があったら、はじれぬように後を尾行け、その住居を突き止めて参れ」
「かしこまりましてござります」
そこで宗春の一行は、九兵衛を残して帰館した。
永い春の日も暮に近く、花見の客も帰り急ぎをした。
中門の袖に身を隠し乍ら、九兵衛は様子を窺っていた。
と、香具師は荷物を肩にし、チラリ四辺を見廻わしてから、足早に境内を出て行った。
「よし」と云うと小林九兵衛は、中門の袖からヒラリと出た。
怪しい香具師、妖艶なお部屋、天主閣での唸き声。……どう事件が展開するか?
五
香具師はズンズン歩いて行った。
今日の地理を以て説明すれば、長島町を西へ執り茶屋町、和泉町を北に眺め、景雲橋の方へ進んで行った。景雲橋を渡り明道橋を渡り、尚何処迄も西の方へ進んだ。もう此辺は城下の外で、向うに一塊此方に一塊、百姓家が立っているばかりであった。いつか日が暮れ夜となったが、十五夜の月が真丸に出て、しくものぞ無き朧月、明日は大方雨でもあろうか、暈を冠ってはいたけれど、四辺は紫陽花色に明るかった。
と、一軒の家があった。その戸口まで行った時、香具師の姿は不意に消えた。