Japanische Klassiker mit Furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.739 Zeichen · 23 Bildschirme
近江愛之助とは、紛れもなくこの私の名です。そしてこれは滅多にある名ではなく、あんな名を宿帳に書くのは、私の知っている者の偽名か悪戯でなければならず、同伴の染子という名も、あまりにも刺戟的で、決して偶然の暗合でないことは明らかです。
が、不思議なことに年齢を見ると、近江愛之助は六十三歳で私より三つ年上、染子というのは二十一歳で、所謂老恋人のお染よりは三十幾つか若くなって居ります。
「この二人づれに覚えは無いかね」
老番頭に訊くと、
「存じて居ります、父娘のような、御夫婦のような、それは不思議なお伴れでございました。あんまり変って居るので、よく覚えて居りますが、御老人の方は夜中に飛起きて帳場へ来て、少しわけがあって、駅の構内へ行って寝るからと、寝巻のまま毛布一枚だけ持って出て行かれましたが、翌る朝は平気な顔で帰られたようです」
「若い方の女の人は」
「お綺麗な方で、洋装でございました。二十歳前後でしょうか、ヘエ」
斯う云われると益々わからなくなりました。藤波金三郎が、お染婆さんの夫の追及を恐れて変名で泊ったということは考えられ、その変名にフト思い付いて私の名を借用する事もあり得ますが、六十近いお染婆さんが、四十も若くなって、二十歳前後の娘で藤波金三郎と三十七年前の恋のコースを辿っているのはどうしたことでしょう。