Japanische Klassiker mit Furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.739 Zeichen · 23 Bildschirme
二
この美しい女性――しかも命にかけて恋した相手と一緒に、殆んど三十時間に近い旅を続けるのは、金三郎にとっては、一つの恐怖だったのです。
と申すのは、お染をベアトリーチェにして、その神聖な記憶を胸に畳んだまま、ブラジルへ逃避しようとした藤波金三郎が、斯んなことからフト恐ろしい誘惑に打ち負かされ、万々一にも、ベアトリーチェの神聖を冒涜するような事があっては、二十五歳まで童貞を守り続けて来た自分の精進も、日本を見限ってブラジルへ行こうとした決心も、たった一ぺんに土崩瓦解しそうに思えてならなかったのです。が、拒む筋合ではなく、第一その口実も無かったので、藤波金三郎はこの美少女お染と不思議な旅に上ることになったのです。うんと腹の減った者が、山海の珍味を托されて、生唾を呑み乍ら運んでいるような――それは譬えようの無い変挺な心持の旅であったと、当の藤波金三郎が、遥か後になって私へ話して居りました。
二
鄙に稀なる美少女のお染は、その頃流行の大きい庇髪に結って、紫の袴をはいて居りました。田舎の実科女学校みたようなのは卒業した筈ですが、その頃別に学校へ上っていなかったお染が、紫の袴をはくのは可笑しいようですが、当時紫の袴を裾長にはいて、紋羽二重の羽織を着、インク壜をぶら下げて歩くのは、若い娘達の一つの見得で、東京の山の手から