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Japanische Klassiker mit Furigana

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きだんクラブ〔せんごばん〕

奇談クラブ〔戦後版〕

野村 胡堂

Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.739 Zeichen · 23 Bildschirme

Aozora Bunko

五

五

「ところで、君はその恋人に逢ったのかえ」

Sはたまり兼ねて問いました。

「逢ったよ、――僕は恐ろしい冒険をしたのだ。そのために、持って来た旅費の半分を投出した、――彼女には夫があったのだ、その夫は村のやくざだ、人と喧嘩をすることを、職業のようにしている男だ」

藤波金三郎は太息を吐きながら言うのでした。六十歳を越した藤波金三郎が、これも六十歳近いお染に逢うために、真に命がけの冒険が必要だったのです。

「逢ったところで、どうという事は無いが、お染は僕にとっては永久にベアトリーチェだ」

「その婆さん綺麗か」

誰かが皮肉な調子で口を容れました。

「綺麗だよ、昔の通り、――ある知合の家の二階を借りて、ほんの一時間ばかり、そっと逢ったのだが、昔と少しも変らなかったよ、無口で上品でね――僕はたまらなくなって彼女の膝に顔を埋めて泣いたが、彼女は冷たい顔をして笑っているのだよ」

藤波金三郎は、顔一杯の皺で苦笑し――いや泣き笑いと言った方が宜いかも知れない、兎も角も酔顔をクシャクシャに歪めて笑うのです。

「それで君は安心してブラジルへ帰る積りか、其処には君の家族がいるだろう」