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Japanische Klassiker mit Furigana

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きだんクラブ〔せんごばん〕

奇談クラブ〔戦後版〕

野村 胡堂

Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.161 Zeichen · 26 Bildschirme

Aozora Bunko

「え?」

一千万円の遺産を、夫人は弊履の如く棄てようというのです。

「私には入用の無い財産でございますし、それに、一年でも二年でも――一生でも独身でおりますが、財産のために縛られ度くはございませんから――」

それは何んという爆発的な反抗の言葉でしょう。鈴子夫人の顔は水の如く静かですが、その静かな表情のうちに、火の如く燃えさかる情熱と自尊心を感じさせたのです。

二十五歳の若くて美しい未亡人が、一千万円の遺産を辞退したというだけでも、十分奇談として皆様にお話する値打があると思いますが、これはほんの事件の発端で、本当の奇談はこれから始まるのであります。

「奥様が遺産を辞退なされば、国府さんが日頃心に掛けられたように、この財産は全部財団法人として、養老院を建設することになりますが――」

佐瀬渉もさすがに安からぬ顔を挙げます。

「それは、故人の口癖に申していたことで御座います。今の日本には、財産も無く、働く健康も無い老人を収容して、その余生を楽しませる機関が何より必要だと」

「お待ち下さい、奥様、いや、鈴子さん、それはあんまり短気過ぎます。――国府さんの遺言状には、奥様に再婚してはいけないとは書いてありません。