Japanische Klassiker mit Furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.161 Zeichen · 26 Bildschirme
一
奇談クラブの会員達は、いとも神妙に耳を傾けております。
一
五年ほど前に、有名な実業家で、若くて美しい夫人を持っている、国府金弥老人が死んだことは、皆様も御記憶のことと存じます。醜怪な老人が、たとえ二度目であったにしても、孫のような若い夫人を持つということは、兎角世上の噂に上るものですが、わけてもこの鈴子夫人のように、非常な美人で、詩がうまいとなると、物好きな世間は、安からぬゴシップを飛ばさずにはおきません。
それが僅か二十五歳で、河馬のように醜悪な六十歳の老人と結婚したのです。昔から老人が若い妻をめとった例は決して少くありませんが、ゲーテのように、稀代の大天才が、年齢の距りを越えて、若い少女の心を引付けたのは別として、多くの場合それは、不純な動機や事情で結び付けられるのが普通で、国府金弥老人と鈴子夫人の間にも、面白からぬ噂があり、出雲の神様の赤縄の代りに、極めて現世的な黄金のロープで結び付けられたことは、容易に想像されることであります。
鈴子夫人の詩が、それからどんなに悩み多いものになったか。詩集「銀の鈴」を御覧になればわかるのですが、あの透き通るような、清麗そのものといってよい鈴子夫人が、河馬老人の格子無き牢獄に閉じこめられてからは、日一日と、見る影もなくやつれ果てていったことは申すまでもありません。